- 2025.08.26
歯並びに問題がある方へのインプラント治療
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Before
正面
上顎
下顎
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After
正面
上顎
下顎
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Before
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After
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| 患者 | 60代女性 |
|---|---|
| 主訴・ニーズ | 入れ歯が合わないので、インプラント治療をしてほしい |
| 診断名・症状 | 上顎前突 顕在的病的咬合 |
| 抜歯部位 | 上顎右側第2大臼歯、上顎左側第2小臼歯 |
| 治療内容・治療費(自費診療) | 矯正治療880,000円(税込) インプラント治療1歯385,000円(税込) セラミック修復1歯165,000円(税込) 歯周形成外科 |
| 治療費総額 | 診断用ワックスアップ165,000円 矯正治療880,000円 インプラント治療5歯 385,000円×5 サージカルガイド55,000×3装置 セラミック修復11歯 165,000円×11 歯周形成外科 根面被覆術110,000円 歯冠長延長術33,000円×3歯 総額5,159,000円(税込) |
| 治療期間 | 4年 |
| 来院頻度 | 週1回から月1回 |
| リスク・副作用 | 1. インプラント治療 リスク 手術後の腫れ・痛み・出血 感染の可能性(インプラント周囲炎) 骨造成を伴う場合、骨が十分に再生しないリスク 上顎洞に近い部位では、サイナスリフト後に上顎洞炎を起こす可能性 副作用 手術部位の一時的な知覚鈍麻やしびれ 長期間での骨吸収やインプラント脱落の可能性 2. 矯正治療 リスク 歯の移動に伴う痛みや違和感 歯根吸収の可能性(長期矯正の場合) 歯周病がある方では、歯の移動による歯槽骨への負担増加 副作用 装置による口腔内の傷・口内炎 清掃不良による虫歯・歯肉炎 3. 歯周病治療 リスク 治療後の歯の動揺や知覚過敏 外科治療を行った場合、一時的な腫れ・出血・痛み 副作用 歯ぐきが下がり、歯が長く見えることがある 4. 歯冠長延長術 リスク 歯ぐきを下げるため、治療後に歯が長く見える審美的変化 一時的な腫れや痛み 副作用 治療部位が知覚過敏になりやすい 5. 根面被覆術(CTG・VISTAテクニック) リスク 移植部位の違和感や腫れ 移植した歯ぐきが定着しない場合がある 副作用 治療後の一時的な出血・腫脹・知覚過敏 6. 接着性ブリッジ リスク 脱離(外れる可能性) ブリッジの破損 副作用 咬合力が強い場合には長期安定が難しいことがある 7. 全身疾患との関係(シェーグレン症候群) リスク 口腔乾燥により虫歯・歯周病リスクが上昇 インプラント治療後の感染リスク増加 副作用 口腔内の違和感や義歯装着の不快感が出やすい |
こんにちは。福岡市東区香椎にあるまこと歯科・矯正歯科の院長、木村誠です。
今日は、歯並びが悪い方にインプラント治療を行ったケースについてご紹介します。
歯並びに問題がある方にインプラント治療をする場合、特に最初の1本目のインプラントを入れるときは、よく考えて治療計画を立てることが大切です。
インプラントはとても優れた治療法ですが、一度入れてしまうと、簡単には動かせません。それに対して、自分の歯(天然の歯)は、矯正治療によって少しずつ動かすことができます。
そのため、歯並びが悪いままでインプラントを入れると、あとから矯正ができなくなることがあります。ですので、次の2つの方法のどちらが良いかを、事前にしっかり決める必要があります:
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今の歯並びのままインプラントを入れる
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まず歯並びを矯正して整えてから、インプラントを入れる
患者さん一人ひとりの状態に合わせて、最適な方法を一緒に考えていきますので、安心してご相談ください。
患者様は60代の女性で、「入れ歯が合わなくて困っている」というお悩みで当院に来院されました。

※初診時口腔内写真①

※初診時口腔内写真②(義歯装着時)
初めてご来院いただいたとき、上下の奥歯の部分に入れ歯が装着されていました。

※初診時正面
写真の丸で囲んでいる部分をご覧いただくと、左下の一番奥の歯が、上あごの粘膜(歯ぐきの内側)にぶつかりそうなくらい高い位置にあるのがわかります。

※上の歯の歯頚線
上記の写真を見ると、左右のバランスが取れておらず、歯の位置もバラバラで整っていないことがわかります。

※切端を結ぶ線
上記の写真を見ると、歯の形や位置がそろっておらず、不均等であることがわかります。

※上の歯の形
上の歯が左右非対称であることがわかります。

※右側側方面
写真の丸で囲んだ部分に注目すると、歯の根元の部分が欠けているのがわかります。これは「くさび状欠損(けっそん)」と呼ばれるもので、歯ぎしりや食いしばりなどの強い力が加わったことが原因と考えられます。
このような欠け方は、奥歯に大きな負担がかかっているサインでもあります。

※左側方面
写真の丸で囲んだ部分に注目すると、歯ぐきが下がっているのが確認できます。
歯ぐきがもともと薄い方の場合、このように歯ぐきが下がってしまうことがあります。歯ぐきが下がると、歯の根元が露出しやすくなり、「しみる」といった知覚過敏や、根元に虫歯ができるリスク(根面う蝕)が高くなります。

※咬合平面
写真の白い線に注目すると、奥に行くほど上あごの方向に上がっている「後ろ上がり」の状態になっているのがわかります。
このように噛み合わせの平面(咬合平面)が後ろ上がりになっている場合、上下の奥歯が強くぶつかりやすくなります。この異常な接触を「干渉(かんしょう)」と言い、歯に過剰な力がかかることで、歯を失う原因になることがあります。

※上顎咬合面
写真の丸で囲んだ部分に注目すると、歯と歯の間に隙間があるのがわかります。
これは、下の歯が強く噛み込んでいることで、上の歯が押されて少しずつ動き、このような隙間ができたと考えられます。この状態が続くと、食べ物がその隙間に詰まりやすくなり、虫歯や歯ぐきの炎症の原因になることがあります。

※歯列の連続性
上あごの歯並びに注目すると、歯がきれいに並んでおらず、ガタガタしていて連続性がないことがはっきりとわかります。

※上顎口蓋隆起
写真の丸で囲んだ部分を見ると、上あごの中央にふくらみが見られます。これは「口蓋隆起(こうがいりゅうき)」と呼ばれるもので、歯ぎしりや食いしばり(ブラキサー)がある方によく見られる特徴です。
このような力が強くかかる習慣があると、奥歯に大きな負担がかかり、結果として奥歯を失う原因の一つになることがあります。

※下顎の咬合面
下あごの歯並びを見ても、歯が整っておらず、ガタガタしていて連続性がないことがわかります。
このような歯並びの乱れは、見た目だけでなく、噛み合わせやお口の清掃のしにくさにも影響し、将来的なトラブルの原因になることがあります。

※両側下顎犬歯
写真の丸で囲んでいる2本の歯は「犬歯(けんし)」です。
左側の犬歯(写真では向かって右側の丸で囲った歯)は、右側の犬歯と比べて、明らかに外側、つまりほっぺた側にずれているのがわかります。このような歯の位置のズレを「転位(てんい)」と言い、噛み合わせや見た目に影響を与えることがあります。

※初診時パノラマX線写真
黄色で囲んでいる部分を見ると、右下(写真の左下)と左上(写真の右上)の奥歯(臼歯)が失われていることが確認できます。
また、水色で囲った部分に注目すると、あごの関節(顎関節)の形が正常とは異なっているのがわかります。顎関節の形に問題がある場合、あごを安定した正しい位置に合わせるのが難しくなることがあります。そのため、治療が複雑になる「難症例」となることもあります。

※歯周病検査表とデンタルX線写真
歯周病の検査結果から、奥歯の部分には5mm以上の深い歯周ポケットがあることが確認できました。また、すべての歯にわたって骨が水平に減っている「骨吸収(こつきゅうしゅう)」も見られました。
これらの結果から、この患者様は「中等度の歯周病」と診断しました。
歯周病がある状態でインプラント治療を行うと、インプラントの周りに炎症が起きる「インプラント周囲炎」になるリスクが高いことが、研究でも報告されています。
そのため、まずは歯周病をしっかり治すことがとても重要です。必要に応じて、歯ぐきの中を清掃する「歯周基本治療」や、さらに進んだ「歯周外科治療」を行うこともあります。

※右上(上記左の写真)と左下(上記右の写真)臼歯ぶのデンタルX線写真
黄色で示した部分を見ると、銀歯とその下の歯との間にわずかな隙間ができているのが確認できます。
このような状態は、銀歯と歯の間にぴったり合っていない「適合不良(てきごうふりょう)」の可能性があり、そこから虫歯が再発している可能性も高いと考えられます。放っておくと症状が悪化することもあるため、早めの確認と対応が必要です。

※左上小臼歯部デンタルX線写真
黄色い丸で囲んだ部分に注目すると、「メタルコア」と呼ばれる金属の土台が入っていることがわかります。
また、そのまわりに残っている歯の厚みがとても薄くなっているのも確認できました。このような状態では、歯にかかる力に耐えきれず、破折(はせつ:歯が割れること)が起きやすくなります。
実際にこの歯は、治療の途中で破折してしまい、残念ながら抜歯となりました。

※下顎前歯部のデンタルX線写真
水色の線は、健康な歯ぐきと骨の状態における正常な「辺縁骨(へんえんこつ)」の高さを示しています。
それに対して、黄色い線はこの患者様の初診時の骨の高さを表しており、明らかに低くなっていることがわかります。これは「水平性の骨吸収(こつきゅうしゅう)」と呼ばれる状態で、歯周病によって歯を支える骨が全体的に減ってしまっていることを意味します。

※頭部X線規格写真およびその分析値
歯並びに乱れがある患者様の場合、この「頭部X線規格写真(とうぶエックスせんきかくしゃしん)」による分析は、治療を進めるうえで非常に大切な情報となります。
今回の分析結果から、この患者様は「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」という、上あごが前に出ている骨格の特徴があり、さらに上下前歯の両方が前に出ている「上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)」の状態であることがわかりました。
問題点と解決策
問題点①臼歯の欠損→解決策①インプラント治療
問題点②歯列不正→解決策②矯正治療
問題点③多数の失活歯→解決策③予防、根管治療、挺出&歯冠長延長術、抜歯
問題点④下顎左側側切歯欠損→接着性ブリッジ
問題点⑤シェーグレン症候群
診断
歯列不正を有し、咬合崩壊を起こしつつある顕在的病的咬合
Skeletal Class2 Bimax
インプラント治療を長く安定して使い続けるためには、まず前歯の噛み合わせをしっかり整えることが大切です。
そのうえで、奥歯の部分にインプラント治療を行い、しっかりとした「噛む力の支え(サポート)」を作ることで、インプラントを長持ちさせることができます。

※理想的な治療計画
この患者様は、骨格的に「Ⅱ級の上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)」という特徴が見られます。そのため理想的な治療計画としては、上下左右の小臼歯を1本ずつ、合計4本抜歯し、前歯を後ろに下げる(リトラクト)矯正治療を行ったうえで、適切な位置にインプラントを埋入するという流れになります。
しかし、このような治療計画の場合、矯正治療だけでも通常2〜3年程度かかります。さらに、この患者様には全体的に中等度の歯周病があるため、大きな歯の移動を行うことは歯ぐきや骨に負担がかかり、リスクが高くなると考えられます。
また、インプラント治療とその後のかぶせ物(補綴治療)まで含めると、全体の治療期間は4〜5年に及ぶ可能性があり、現実的な選択肢とは言い難いと判断しました。
加えて、シェーグレン症候群の症状も強くみられたため、この時点では、インプラント治療は断念することとなりました。
そこで今回は、最低限歯列を整えて、精密義歯と補綴物で治療することとしました。

※矯正治療開始
当初インプラント治療ができない状態でしたので、最低限の歯列不斉の改善を目的として矯正治療を開始しました。

※矯正治療終了時口腔内写真
最低限の歯並びを整える治療を行い、精密な入れ歯(精密義歯)を装着できる状態まで回復しました。
そのタイミングで、シェーグレン症候群の症状が落ち着き(寛解)、インプラント治療が可能かどうかを主治医の先生に確認しました。その結果、「インプラント治療は可能」との判断をいただいたため、当院でも慎重に検討のうえ、インプラント治療を行うこととしました。

※診断用ワックスアップ
インプラント治療が可能となったため、まず「診断用ワックスアップ(模型上で最適な噛み合わせを確認する検査)」を行いました。
この検査により、インプラントをどの位置に入れるのが最もよいか、またその上に装着するかぶせ物(補綴物)の形やかみ合わせのバランスについて、より詳しく計画を立てることができました。

※矯正治療後(初回)正面
改めてお口の中を診察したところ、写真から上下の前歯の「正中(せいちゅう)」、つまり真ん中の位置にズレがあることが確認できました。
また、丸で囲った部分は「切端咬合(せったんこうごう)」といって、上下の前歯の先端同士がぶつかるような噛み合わせになっています。このままでは歯にかかる力が強くなるため、もう少し前歯に「被蓋(ひがい)」と呼ばれる重なりをつけて、負担を軽くすることが望ましいと考えられます。

※上顎前歯部の精査①
歯の大きさの不揃いがあります。このような場合治療ゴールを設定するために口元の写真からこの患者様に最適な歯の形を描きます。

※上顎前歯部の診査②
上あごの前歯の歯ぐきの状態を詳しく確認しました。
右上の前歯から小臼歯にかけては、歯がやや短いことがわかりました。特に右上の犬歯は、歯ぐきの上にしっかりと残っている健康な歯の部分(フェルール)が不足していました。そのため、歯を少し引き出す治療(挺出)を行う計画としました。ただし、この治療を行うとさらに歯が短く見えてしまうため、歯の長さを適切に整える「歯冠長延長術」という治療も合わせて行うことにしました。
一方、左上の前歯では歯ぐきが下がっており、歯の根元が露出している部分が見られました。このままにすると、根元に虫歯ができやすくなったり、しみる症状(知覚過敏)が起こるリスクが高まります。そのため、歯ぐきを下がった部分に覆いかぶせる「根面被覆術」という治療を行うことにしました。

※下顎左側側切歯欠損
下あごの前歯が欠けている場合、歯と歯の間隔がとても狭いため、インプラント治療を行うのは非常に難しく、治療方法の選択に悩むことが多い部位です。
10年以上前までは、取り外し式の入れ歯を使わないためには、大きく歯を削ってブリッジを装着するしか選択肢がありませんでした。ところが、現在では接着技術の進歩により、「接着性ブリッジ」という方法を使うことで、歯をほとんど削らず(場合によってはまったく削らずに)、固定式の治療を行うことが可能になりました。
ただし、この接着性ブリッジには、外れてしまったり壊れてしまうといったリスクがあることも事実です。そのため、利点と欠点をしっかり理解したうえで治療を選んでいただくことが大切です。

※下顎前歯部の歯肉の精査
下あごの前歯の部分も歯ぐきが下がっていましたが、診断の結果、この部分では「根面被覆術」を行うのは難しいと判断しました。
ただし、下あごの前歯の周囲は唾液の流れが多く、比較的虫歯が進行しにくい環境にあります。そのため、この部分については治療よりも予防を徹底し、歯の根元に虫歯(根面カリエス)ができないように管理していく方針としました。

※最終的な治療計画
再度、矯正治療を行う計画を立てました。
今回の2回目の矯正治療では、主に次の点を目標としました。
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前歯のかみ合わせ(被蓋)を改善すること
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下あご左側の第2小臼歯のねじれ(捻転)を改善すること
さらに、上あご右側の犬歯については、歯ぐきの上に健康な歯の部分(フェルール)を確保するために、歯を少し引き出す部分的な矯正治療(挺出)を計画しました。
治療

※右下臼歯部のインプラント1次&2次手術
右下のインプラントの1次手術では、インプラントを埋め込むと同時に、骨を補う処置(水平的な骨造成)も行いました。
このとき、吸収性の膜とチタン製のネジ(テンティングスクリュー)を使用し、できるだけ安全に骨を増やす方法を選択しました。
その後の経過は良好で、およそ半年が経過した時点で2次手術を行い、インプラントの上に「ヒーリングアバットメント(仮の土台)」を装着しました。

※デジタル上で設計された仮歯と仮歯装着状態での矯正治療開始
右下の奥歯(臼歯部)のインプラント手術後、しばらく噛む力をかけない「免荷期間」を設けました。
その後、仮歯(プロビジョナルレストレーション)を装着し、矯正治療を開始しました。
※上顎のインプラント治療
右下に仮歯(プロビジョナルレストレーション)を装着し、しっかりとした噛み合わせ(咬合)が確保できてから、上あごのインプラント治療へと進みました。
上あご左側の奥歯(臼歯部)では、骨を横方向に補う処置(水平的な骨造成)に加え、上あごの奥にある空洞(上顎洞)を少し持ち上げる「サイナスリフト(クレスタルアプローチ)」を行い、インプラントを埋め込みました。
一方、右上にはブリッジが入っていましたが、上あご右側の第2大臼歯は、新型コロナの影響で来院が遅れた間に虫歯(カリエス)が進行し、抜歯せざるを得ませんでした。そのため、抜歯と同時に隣の第1大臼歯の部分にインプラントを埋入しました。

※上顎右側犬歯の部分矯正治療
上あご右側の犬歯は、歯ぐきの上に残っている健康な歯の部分(フェルール)が少ない状態でした。
そのままかぶせ物をすると、外れてしまったり、歯の根が割れてしまうリスクが高くなります。
そこで、部分的な矯正治療を行い、歯を少し引き出す(挺出)ことで、歯ぐきの上に健康な歯の部分を増やしました。これにより、かぶせ物の安定性を高め、脱離や歯根破折を予防することとしました。

※上顎右側犬歯挺出後ファイバーコアにて築造後の状態
歯を引き出す(挺出)処置を行ったことで、矢印で示した部分のように、歯ぐきの上に約1ミリの健康な歯の部分を確保することができました。
ただし、部分矯正で歯を挺出させると、歯ぐきも一緒に上方向(歯冠側)へ移動してしまいます。そのため、最終的にかぶせ物を安定させるためには、「歯冠長延長術」という、歯ぐきを整えて歯の長さを確保する処置が必要になります。

※上顎右側犬歯、上顎右側第1小臼歯、上顎右側第2小臼歯の歯冠長延長術
フェルール(歯ぐきの上に残る健康な歯の部分)をしっかり確保することに加えて、歯ぐきのラインを整えて見た目をきれいにする目的で、「歯冠長延長術」という処置を行いました。
※歯冠長延長術の術前と術後の比較(上記左の写真が術前、右側術後)
歯冠長延長術とは、簡単に言うと「歯ぐきを下げる手術」です。
矢印で示した部分を見ると、歯の根の部分が少し見えるようになっているのがわかります。
このように歯ぐきを下げて健康な歯の部分をしっかり確保することで、かぶせ物(補綴物)が外れてしまったり、歯の根が割れてしまうリスクを減らすことができます。

※歯肉退縮を認める上顎左側前歯部
上の写真の丸で囲った部分を見ると、歯ぐきが下がっている「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」が確認できます。

※結合組織採取
歯ぐきが下がった部分を覆う外科的な治療法を「根面被覆術(こんめんひくふくじゅつ)」といいます。
この治療を行う際には、ご自身の口の中から歯ぐきの組織を一部移植する「結合組織移植術(CTG)」を併用することが多いです。
さらに、エムドゲインやリグロスといった再生を助ける薬剤を併用することで、治療の成功率をより高めることができます。

※根面被覆術術直後
今回は、できるだけ体への負担を少なくするために、「VISTAテクニック」という方法を用いて、歯ぐきが下がった部分を覆う治療(根面被覆術)を行いました。

※上顎左側前歯部の根面被覆術前後の比較
経過は良好で、上あごの前歯(中切歯部)と犬歯の部分では、下がっていた歯の根元を完全に歯ぐきで覆うことができました。

※プロビジョナルレストレーション装着時
まず、精密に作製した仮歯(プロビジョナルレストレーション)を装着し、しばらく経過を観察しました。
その結果、特に大きな問題は認められなかったため、最終的なかぶせ物(上部構造)の作製へと進むことにしました。

※精密印象
インプラントやセラミックで精密なかぶせ物を作るためには、写真で示しているような「シリコン印象(精密な型取り)」が必要となります。
ただし、最近では「口腔内スキャナー」を使ってお口の中を直接読み取る方法が普及してきており、シリコンでの型取りは少しずつ減ってきています。

※シリコン印象後の模型
シリコンで型取りをする際には、通常「歯肉圧排(しにくあっぱい)」という処置を行います。
これは、歯と歯ぐきの間に細い糸を入れることで、型取りの材料が歯ぐきの中まで入り込み、より正確な型を取れるようにする方法です。
上の写真の矢印で示した部分を見ると、歯と歯ぐきの境目が模型の上にはっきりと再現されているのがわかります。
このように精密に型を取ることで、セラミックのかぶせ物を歯にぴったりと適合させることができます。

※下顎左側側切歯部に接着性ブリッジ(ジルコニアブリッジ)を装着前の状態
治療計画のところでもお伝えしましたが、下あご左側の側切歯が欠けている部分については、今回は歯をまったく削らずに「接着性ブリッジ」で対応しました。
このブリッジには、強度に優れた「ジルコニアセラミック」を使用しています。さらに、現在の接着技術(接着性レジンセメント)の進歩によって、しっかり固定され、長持ちする治療が可能になっています。

※治療終了時半開口時の写真
矯正治療と補綴治療を行うことで、噛み合わせの平面(咬合平面)もきれいに整えることができました。

※治療終了時正面
歯の大きさも揃えることができ、歯並びも整えることができました。

※被蓋の改善
上の写真の矢印で示した下あご左側の犬歯に注目してください。
治療前(左の写真)では、上の前歯より外側(頬側)に出ていましたが、治療後(右の写真)では、上の前歯の内側に正しく収まっているのがわかります。
このように、前歯のかみ合わせ(被蓋)が改善されました。

※治療後の口腔内写真
歯並びは整い、奥歯の欠損部分もインプラント治療によってしっかりと噛めるようになりました。
その結果、患者様には大変ご満足いただき、喜んでいただけました。
まとめ
今回のように、全身の病気や体の状態によっては、インプラント治療が可能な場合と難しい場合があります。そのため、その患者様の状況に合わせた柔軟な対応が大切になります。
また、歯並びが乱れたままインプラント治療を行うと、将来的に治療計画を立てる際に大きな問題となることがあります。そのため、治療前にしっかりと診断を行うことがとても重要です。
こうしたことを十分に理解したうえでインプラント治療を受けていただければ安心ですが、知らずに治療を進めてしまうと、後々困るケースもあります。
当院では、矯正認定医と連携し、総合的な診断を行ったうえでインプラント治療を実施しております。歯並びや歯の欠損でお悩みの方は、どうぞお気軽に当院へご相談ください。
医院情報
医療法人 まこと歯科・矯正歯科
福岡市東区香椎駅前2-12-54-201
電話番号092-692-2963



