- 2026.08.29
前歯が噛み合わない・奥歯のトラブル|再矯正治療、インプラント治療を含む総合的に治療した症例
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Before
治療前 正面
治療前 上下前歯の噛み合わせ
治療前 下顎咬合面
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After
治療後 正面
治療後 上下前歯の噛み合わせ
治療後 下顎咬合面
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Before
初診時
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After
治療終了時
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| 患者 | 40代 女性 |
|---|---|
| 主訴・ニーズ | 奥歯のセラミックをやり直して欲しい |
| 診断名・症状 | 潜在的病的咬合 STAGE3GradeB 上顎左側第2小臼歯歯根破折 下顎右側第1大臼歯重度う蝕 |
| 抜歯部位 | 上顎左側第2小臼歯 下顎右側第1大臼歯 |
| 治療内容・治療費(自費診療) | 矯正治療(インビザライン)924,000円 診断用ワックスアップ220,000円 インプラント治療(1本440,000円 プロビジョナルレストレーション33,000円) セラミック修復(クラウン132,000円、オーバーレイ110,000円) ダイレクトボンディング(44,000円) |
| 治療費総額 | 4,070,000円(税込) |
| 治療期間 | 2年半 |
| 来院頻度 | 月1回程度 |
| リスク・副作用 | 主なリスク・副作用 本症例では、マウスピース型矯正装置による矯正治療、抜歯即時インプラント、セラミック治療、根管治療、ダイレクトボンディングなど、複数の治療を組み合わせて咬み合わせの再構成を行っています。それぞれの治療には、以下のようなリスクや副作用があります。 マウスピース型矯正治療 治療開始時やマウスピース交換時に、歯の痛みや違和感が生じることがあります。また、装着時間が不十分な場合には、予定通りに歯が動かず、治療期間が延長することがあります。治療に伴い、歯肉退縮、歯根吸収、ブラックトライアングル(歯と歯の間の隙間)が生じる可能性があります。治療後には後戻りを防ぐため、保定装置の使用が必要です。 抜歯即時インプラント治療 手術後に痛み、腫れ、出血、内出血、感染などが生じることがあります。インプラントと骨が十分に結合せず、再手術が必要となる場合があります。また、抜歯後の骨や歯肉の吸収によって歯肉退縮や審美的な変化が生じることがあり、必要に応じて骨造成や軟組織移植などの追加処置が必要になる場合があります。治療後も、清掃状態や咬み合わせなどによってインプラント周囲炎を生じる可能性があります。 セラミック治療 セラミック修復のために歯を削る必要があり、治療後にしみる、痛むなどの症状が生じることがあります。セラミックは強い力が加わると欠けたり割れたりすることがあり、脱離や再治療が必要になる場合があります。また、経年的に歯肉の位置や周囲の歯の色が変化し、見た目に差が生じることがあります。 根管治療 治療中や治療後に痛みや腫れが生じることがあります。複雑な根管形態や感染の程度によっては症状や根尖部の病変が改善しないことがあり、再根管治療や外科的歯内療法、抜歯が必要となる場合があります。また、根管治療を行った歯は健康な歯と比較して破折するリスクが高くなることがあります。 ダイレクトボンディング 使用するコンポジットレジンは、経年的に摩耗、変色、着色、欠け、脱離などが生じることがあります。また、咬み合わせや歯ぎしり・食いしばりなどによって破損することがあり、修理や再治療が必要になる場合があります。 咬合再構成治療全体について 咬み合わせを大きく変更する治療では、新しい咬み合わせに慣れるまで一時的に違和感や咀嚼のしにくさ、歯や顎の筋肉の疲労感などを感じることがあります。治療後も咬み合わせは経年的に変化するため、定期的なメインテナンスや咬合調整が必要です。また、歯ぎしりや食いしばりが強い場合には、修復物の破折や摩耗を防ぐため、ナイトガードなどの使用をお願いすることがあります。 治療結果や治療期間、必要となる処置には個人差があり、すべての患者様で同様の結果が得られるとは限りません。 |
皆様こんにちは。まこと歯科・矯正歯科の院長、木村誠です。
今回は、「奥歯の被せ物をきれいにしたい」というご希望で来院された患者様の治療をご紹介します。
患者様は、以前通われていた歯科医院で「この歯をセラミックできれいにするのは難しい」と説明を受けたそうです。
そこで当院では、まずお口の中や歯の状態を詳しく確認し、できるだけ自然で美しい見た目に改善できる方法を検討しました。
今回は、実際の治療の流れとともに、どのように奥歯の見た目と機能を改善したのかをご紹介します。

※初診時口腔内写真①
患者様は、約10年前に他の歯科医院で歯並びを整える矯正治療を受けており、初診来院時も歯並びはきれいに整った状態でした。

※初診時口腔内写真②
歯並び全体の形はきれいに整っていましたが、詳しく噛み合わせを確認すると、上下の前歯がしっかり噛み合っていないことがわかりました。
また、あごを左右に動かした際に、本来は強く当たらない奥歯同士が接触し、噛み合わせの動きを妨げている部分もみられました。

※初診時口腔内写真下顎咬合面
黄色の丸で囲った奥歯には、内側に金属を使用したセラミックの被せ物が入っており、その一部が欠けている状態でした。
また、奥歯全体にすり減りがみられ、本来あるはずの歯の山の部分が低くなり、形が失われているところも確認できました。
水色の丸で囲った部分は下の前歯です。通常、下の前歯は6本ありますが、この患者様は4本しかありませんでした。
詳しくお話を伺ったところ、下の前歯2本はもともと生えてこなかったことがわかり、生まれつき歯の本数が少ない状態であると考えられました。

※初診時上顎咬合面
矢印で示した部分には、左右ともに本来あるはずの小臼歯がありませんでした。
このことから、以前の矯正治療では、歯を並べるためのスペースを確保する目的で小臼歯を抜歯して治療を行ったと考えられます。

※初診時半開口
半開きの状態で撮影した写真を見ると、向かって右側の矢印で示した奥歯(実際には左側の奥歯)が、周囲の歯と比べてやや高い位置にあることがわかります。
また、黄色の丸で囲った前歯に注目すると、上下の前歯はしっかり噛み合っていないにもかかわらず、歯の先端がすり減っていることが確認できました。
このような歯のすり減り方から、日常的な歯ぎしりや食いしばりなどによって、歯に強い力がかかっている可能性も考えられました。

※初診時左右側方運動時
歯ぎしりをするように、あごを左右に動かしていただくと、奥歯同士が強く当たっている部分があることがわかりました。
あごを横に動かしたときの噛み合わせにはいくつかのタイプがありますが、犬歯が中心となって動きを誘導し、奥歯への負担を減らす「犬歯誘導」は、望ましい噛み合わせの一つとされています。
一方で、あごを左右に動かした際に奥歯が強く接触すると、特定の歯に過度な力がかかり、歯のすり減りや被せ物の破損、歯の揺れなどにつながることがあります。
特に歯周病によって歯を支える骨がすでに減っている場合には、こうした強い力が加わることで、歯やその周囲の組織への負担がさらに大きくなる可能性があります。

※初診時パノラマX線写真
レントゲン写真を確認したところ、あごの関節には大きな形の異常はみられませんでした。また、親知らずはすべて抜歯されていることも確認できました。
黄色の丸で囲った部分は、過去に神経を取る治療を受けた歯です。これらの歯の多くで、歯の根の先に炎症が起きている可能性がある所見がみられました。
そのため、それぞれの歯について詳しく検査を行い、治療が必要かどうかを一つずつ確認していく必要がありました。

※歯周病検査表およびデンタルレントゲン写真14枚法
歯周病の検査を行ったところ、最も深い部分は左上の第2小臼歯で、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)が一部8mmまで深くなっていました。
また、奥歯を中心に、ほかの部位にも5mm以上の深い歯周ポケットが多くみられ、検査時に出血を伴う部分も確認されました。
健康な歯ぐきでは歯周ポケットは一般的に1〜3mm程度とされているため、これらの所見から、複数の部位で歯周病による炎症が進んでいることがわかりました。

※右下第1大臼歯部のデンタルX線写真
黄色の丸で囲った部分を見ると、歯の根の先の周囲で骨が減っていることを示す所見が確認できました。
また、赤い丸で囲った部分にも骨が失われているような所見がみられました。ここは、歯の根が枝分かれしている「根分岐部」と呼ばれる部分です。
この部分に骨の減少がみられる場合、歯周病の進行だけでなく、歯の根にひびが入っている、あるいは以前の治療によって歯に穴が開いているなど、さまざまな原因が考えられます。いずれの場合も、歯を残すことが難しくなることがあります。
そこで、被せ物の中に入っていた土台を取り除き、歯の内部を詳しく確認しました。
その結果、むし歯が深く進行しており、歯の内部の底の部分に大きな穴が開いている状態であることがわかりました。
歯を長期的に安定して残すことは難しいと判断し、最終的に抜歯が必要な状態と診断しました。

※上顎左側臼歯部のデンタルX線写真
上あご左側の第2小臼歯は、先ほどの歯周病検査でも、一部に8mmという非常に深い歯周ポケットが確認されていました。
これほど深い歯周ポケットがある場合、歯周病によって歯を支える骨が部分的に大きく失われている可能性や、歯の根にひびが入っている可能性が考えられます。
そこで、被せ物などを外して歯の状態を詳しく確認したところ、実際に歯の根が破折していることがわかりました。
この状態では歯を長期的に残すことが難しいと判断し、こちらの歯についても抜歯が必要な状態と診断しました。


※マウスピース装着
本格的な治療を始める前に、まず現在のあごの位置や噛み合わせの状態を詳しく確認することにしました。
上の写真の矢印で示している透明なマウスピースを装着していただき、あごの位置や噛み合わせがどのように変化するかを確認するため、約1か月間経過をみました。

※顎の位置の変化
約1か月間マウスピースを使用していただき、あごが安定する位置を確認したところ、下あごは普段の噛み合わせの位置よりも、やや後方に下がった位置で安定することがわかりました。
そこで、この安定したあごの位置を基準に、横顔のレントゲン写真(セファログラム)を用いて、あごの骨格や歯の位置、上下のあごのバランスなどを詳しく分析することにしました。

※頭部X線規格写真
セファロ分析の結果、上下のあごの骨格そのものには大きな問題はなく、上あごと下あごの前後的な位置関係も良好であることがわかりました。
一方で、歯の位置を詳しく確認すると、上の前歯はやや前方に傾き、反対に下の前歯は内側に倒れている状態でした。
このような前歯の傾きによって、上下の前歯がうまく噛み合っていない状態になっていることがわかりました。


※診断用WaxUp
上の写真は、治療後の歯の形や噛み合わせを事前に確認するために、デジタル上で作成したシミュレーションです。
このシミュレーションをもとに検討したところ、歯と歯の間の形を整え、前歯があごの動きを適切に誘導できる噛み合わせにするためには、被せ物による治療だけではなく、矯正治療も組み合わせる必要があると判断しました。
診断
咬合:前歯部先天欠損を含むアンテリアガイダンスの欠如により、臼歯部が崩壊しつつある病的咬合
歯周病:広汎型慢性歯周炎Stage3Grade B
下顎右側第1大臼歯重度う蝕
上顎左側第2小臼歯歯根破折
上顎右側第2大臼歯および下顎左側第2大臼歯慢性根尖性歯周炎
今回の噛み合わせで最も大きな問題は、前歯があごの動きをうまく誘導できていないことだと考えました。
本来、前歯には、あごを前後や左右に動かした際に奥歯への負担を減らす役割があります。しかし、この患者様ではその働きが十分ではありませんでした。
その原因の一つとして、下の前歯が生まれつき2本少ないことが影響している可能性があると考えました。
治療計画
前歯があごの動きを適切に誘導できる噛み合わせをつくるためには、被せ物をやり替える治療だけでは十分ではないと判断しました。
そこで、マウスピース矯正によって歯の位置を整え直したうえで、必要な部分に被せ物や修復治療を行う治療計画としました。
具体的には、まず内側に倒れている下の前歯を適切な角度に起こし、前歯同士ができるだけ自然に噛み合う位置へ整えていきます。そのうえで、矯正治療だけでは十分に噛み合わない部分については、被せ物や歯の形を整える修復治療によって補う方針としました。
また、保存することが難しく抜歯となった部分については、失った歯の機能を補うためにインプラント治療を行うこととしました。
治療経過
治療のおおまかな流れ
① 保存が難しい歯を抜歯し、インプラント治療を行う
抜歯が必要な歯にはインプラント治療を行い、まずは治療途中に使用する仮歯を装着します。
② マウスピース矯正で前歯の噛み合わせを整える
マウスピース矯正によって歯の位置や傾きを調整し、上下の前歯がより適切に噛み合うように整えていきます。
③ 仮歯で噛み合わせを確認する
矯正治療後の歯の位置に合わせて仮歯を調整・装着し、見た目や噛み合わせ、あごの動きに問題がないか一定期間確認します。
④ 最終的な被せ物を装着する
仮歯で問題がないことを確認したうえで、最終的なセラミックなどの被せ物に置き換えます。
⑤ マウスピースを使用しながら定期検診へ移行する
治療後の歯並びや噛み合わせを安定させるためにマウスピースを使用していただき、定期的なメインテナンスへ移行します。

※右下第1大臼歯抜歯即時インプラント(術前)
今回、右下の第1大臼歯は、むし歯が大きく進行していたことが抜歯の主な原因でした。
レントゲンやCTで詳しく確認したところ、抜歯後もインプラントをしっかりと固定するために必要な骨が残っていると判断できたため、抜歯と同じ日にインプラントを埋め込む手術を行うことにしました。
このように、抜歯と同時にインプラントを埋め込む方法を「抜歯即時インプラント」といいます。
抜歯即時インプラントは、すべての症例で行えるわけではありません。インプラントを安定して固定できるだけの骨が残っていることや、歯ぐきの厚みや幅など、周囲の組織の状態が良好であることなど、いくつかの条件が整っている必要があります。
今回の症例では、これらの条件を満たしていると判断したため、抜歯即時インプラントを選択しました。
抜歯即時インプラントのメリットの一つは、抜歯とインプラント埋入を同日に行うことで、手術の回数を減らせる可能性があることです。また、抜歯した部分が治っていく過程を利用しながら治療を進めることができるため、通常のインプラント治療と比べて治療期間を短縮できる場合があります。
一方で、すでに骨が治った状態にインプラントを埋め込む方法と比べると、抜歯した直後の穴の中に適切な位置と角度でインプラントを埋め込む必要があるため、より慎重な診断と高度な技術が求められます。
そのため当院では、CTなどを用いて骨や歯ぐきの状態を十分に確認し、抜歯即時インプラントが適していると判断できる場合に選択しています。

※上顎左側第2小臼歯
保存することが難しいと判断した上あご左側の第2小臼歯についても、抜歯と同じ日にインプラントを埋め込む「抜歯即時インプラント」を行いました。その後、右下・左上ともに経過は良好で、インプラントが安定していることを確認できたため、噛み合わせや歯の形を細かく調整した精密な仮歯(プロビジョナルレストレーション)を装着しました。この仮歯で噛み合わせを確認しながら、次のステップとしてマウスピースによる矯正治療を開始することとしました。


※矯正治療終了時口腔内写真
マウスピース矯正を行い、内側に倒れていた下の前歯を適切な角度まで前方へ起こすことで、上下の前歯の噛み合わせを改善することができました。
しかし、矯正治療だけでは前歯を十分に噛み合わせるところまでは改善できなかったため、残った部分については被せ物や修復治療によって、さらに噛み合わせを整えることとしました。
ただし、すぐに最終的な被せ物を装着するのではなく、まずはお口全体に精密な仮歯(プロビジョナルレストレーション)を装着しました。
この仮歯の状態で、噛み合わせやあごの動き、見た目、日常生活での使い心地などに問題がないかを確認しながら、一定期間経過を見ることとしました。


※上顎前歯部
上の前歯については、歯の裏側に歯科用の樹脂を直接盛り足す「ダイレクトボンディング」を行い、下の前歯と適切に噛み合うように形を調整しました。また、初診時には上あご右側の側切歯と犬歯の先端がすり減り、本来の歯の形が失われていました。
そこで、これらの歯についてもダイレクトボンディングなどを用いて形を整え、できるだけ本来の自然な歯の形に近づけるよう修復しました。

※下顎前歯部
下の前歯についても、歯科用の樹脂を直接歯に盛り足して形を整える「ダイレクトボンディング」を行い、すり減った部分や不足していた歯の形を、できるだけ本来の自然な形に近づけました。
これにより、上下の前歯が適切に接触するようになり、前歯であごの動きを誘導できる噛み合わせをつくることができました。

※臼歯部プロビジョナルレストレーション
奥歯についても、事前に作成した治療後のシミュレーション(診断用ワックスアップ)をもとに、理想的な歯の形をお口の中で正確に再現するための型(インデックス)を作製しました。
この型を使用し、ダイレクトボンディングによって奥歯の形や噛み合わせを細かく調整し、最終的な被せ物を入れる前の精密な仮歯(プロビジョナルレストレーション)として仕上げました。

※全体的にプロビジョナルレストレーションを装着した状態
前歯の噛み合わせを整え、さらに奥歯でもしっかりと噛む力を支えられる状態をつくることができました。
このように、まずは精密な仮歯(プロビジョナルレストレーション)の状態で一定期間使用していただき、噛み合わせやあごの動き、見た目、食事のしやすさなどに問題がないかを確認していきます。
プロビジョナルレストレーションは、形そのものは最終的な歯に近い状態まで仕上げていますが、使用している材料は長期間の使用を前提としたものではありません。そのため、問題がないことを確認できた段階で、必要な部分をより耐久性の高いセラミックなどの最終的な修復物へ置き換えていきます。
今回も一定期間経過をみましたが、噛み合わせや見た目、使用感などに大きな問題はみられなかったため、最終的な修復物を作製する工程へ移行しました。
なお、上下の前歯については、ハイブリッドコンポジットレジンと呼ばれる、歯科用の樹脂にセラミック成分を含んだ材料を使用して修復しています。
前歯については、この材料で必要な強度と自然な見た目を確保でき、噛み合わせも安定していると判断したため、そのまま最終的な修復物として使用することとしました。
そのため今回は、奥歯の部分のみをセラミックによる最終的な修復物へと置き換えていきました。

※下顎右側臼歯部最終修復物
前歯の噛み合わせが安定すると、奥歯にかかる力のバランスも整いやすくなり、奥歯の治療もより行いやすくなります。
今回、奥歯のセラミック治療では、歯全体を大きく削って被せる従来型のクラウンではなく、主に噛む面を覆う「セラミックオーバーレイ」という方法を選択しました。この方法では、必要な部分だけを削ってセラミックで修復することができるため、クラウンと比べて健康な歯を削る量を大きく減らすことができます。
できるだけご自身の歯を残しながら、噛み合わせや強度、見た目を回復できることが、セラミックオーバーレイの大きな利点です。

※下顎左側臼歯部最終補綴物
続いて、左下の奥歯に最終的な被せ物を装着しました。
一番奥の第2大臼歯については、歯全体を覆うクラウンで治療しましたが、それ以外の奥歯については、できるだけ歯を削る量を少なくするため、セラミックオーバーレイで修復しました。
セラミックオーバーレイは、従来のクラウンのように歯を大きく削って被せ物をはめ込むのではなく、歯とセラミックを接着させる力によって維持する治療です。
そのため、セラミックをどのように接着するかが治療の成否に大きく関わります。
当院では、接着時に唾液や湿気が入り込まないよう「ラバーダム」というゴムのシートで治療する歯を隔離し、そのうえで歯とセラミックの両方に複数の接着処理を行ってから装着しています。
この工程は時間と手間がかかりますが、セラミックをしっかりと接着し、できるだけ長く安定して使用していただくために非常に重要な工程だと考えています。


※上顎両側臼歯部最終補綴装着
上あごの奥歯についても、それぞれの歯の状態に合わせて修復方法を選択しました。すでに神経を取る治療が行われている歯には、歯全体を覆うジルコニアセラミッククラウンを使用しました。
一方、神経が残っている歯については、できるだけ健康な歯を削る量を少なくするため、主に噛む面を覆うセラミックオーバーレイで修復しました。また、インプラント部分には、ジルコニアセラミックを使用した、ねじ止め式の被せ物(スクリューリテイン)を装着しました。
この方法は、必要に応じて被せ物を取り外すことができるため、将来的なメインテナンスや修理にも対応しやすいという利点があります。


※治療終了時口腔内写真

※前歯の噛み合わせ変化(左:初診時 中:矯正治療終了時 右:治療終了時)
マウスピース矯正とダイレクトボンディングによる修復を組み合わせることで、上下の前歯が適切に噛み合う状態をつくることができました。

※初診時と治療終了時の上下咬合面
患者様は、以前通われていた歯科医院で「セラミックでの修復は難しい」と説明を受けていたとのことでした。
今回当院では、まずあごが安定する位置を詳しく確認し、そのうえで矯正治療や修復治療を組み合わせながら、前歯と奥歯の噛み合わせを一つずつ整えていきました。
その結果、お口全体でバランスよく噛める状態をつくることができ、最終的に奥歯をセラミックで修復することができました。

※治療終了時正面
まとめ
今回の症例のように、大人の矯正治療では、単に歯並びを整えるだけでは十分な噛み合わせをつくれないことがあります。
大人の場合、すでに歯を失っていたり、歯のすり減りによって本来の形が失われていたり、歯周病によって歯を支える組織に問題が生じていたりすることがあるためです。そのため、矯正治療だけではなく、被せ物やダイレクトボンディング、インプラントなどの治療を組み合わせる必要がある場合があります。
今回の患者様も、以前受けられた矯正治療によって歯並びそのものはきれいに整っていました。しかし、前歯が十分に噛み合っておらず、あごを動かした際には奥歯に負担がかかる噛み合わせになっていました。
そこで今回は、あごの安定する位置を確認したうえで、マウスピース矯正によって歯の位置を整え直し、さらにダイレクトボンディングやセラミック治療によって歯の形を細かく調整することで、お口全体の噛み合わせを整えていきました。
矯正治療では「歯をきれいに並べること」だけでなく、治療後に前歯と奥歯がどのように噛み合い、あごを動かしたときにどの歯が接触するのかまで考えることが大切です。
適切な噛み合わせをつくることは、治療後の歯並びの安定や、特定の歯や被せ物に過度な負担がかかることを防ぎ、できるだけ長くご自身の歯を使っていただくためにも重要だと考えています。
当院では、矯正治療だけでなく、インプラント治療、セラミック治療、ダイレクトボンディング、歯周病治療などを組み合わせ、一人ひとりのお口全体を考えた総合的な治療を行っています。
「矯正治療を受けて歯並びはきれいになったけれど、噛みにくい」「被せ物が何度も欠けてしまう」「噛み合わせに違和感がある」などのお悩みがありましたら、お気軽に当院までご相談ください。
医院情報
医療法人 まこと歯科・矯正歯科
福岡県福岡市東区香椎駅前2-12-54-201
電話番号 092-692-2963
