インプラント・入れ歯

  • 2026.07.12

できるだけ大きな手術を避けた前歯のインプラント治療

  • Before

    できるだけ大きな手術を避けた前歯のインプラント治療

    初診時口腔内写真 正面

  • After

    できるだけ大きな手術を避けた前歯のインプラント治療

    治療終了時口腔ない写真 正面

患者 50代 男性
主訴・ニーズ 上の前歯の治療の続きをしてほしい
診断名・症状 上顎右側中切歯:欠損 上顎右側側切歯:重度う蝕 上顎左側中切歯:慢性根尖性歯周炎 上顎左側側切歯:歯根破折
抜歯部位 上顎両側側切歯
治療内容・治療費(自費診療) インプラント治療 歯根端切除術
治療費総額 インプラント治療440,000円×3 プロビジョナルレストレーション(精密な仮歯)33,000円×3 GBR66,000円 結合組織移植術110,000円 セラミッククラウン132,000円 プロビジョナルレストレーション22,000円 総額1,749,000円
治療期間 約1年
来院頻度 月1〜2回程度
リスク・副作用 各治療における主なリスク・副作用について 前歯の抜歯即時インプラント(ソケットシールドテクニック) ソケットシールドテクニックは、抜歯する歯の頬側歯根の一部を意図的に残し、その内側にインプラントを埋入する治療法です。歯槽骨や歯肉の吸収を抑制し、審美性の維持を目的として行われます。ただし、すべての症例に適応できる治療ではなく、歯根の状態や感染の有無などを十分に評価した上で適応を判断します。 主なリスク・副作用 残した歯根(シールド)が感染した場合、インプラント治療が継続できなくなることがあります。 シールドが吸収・破折・移動することがあります。 シールドが露出し、追加処置や除去が必要となることがあります。 インプラントとシールドの位置関係によっては骨形成が十分得られないことがあります。 骨や歯肉の吸収により、歯肉退縮やブラックトライアングルが生じることがあります。 インプラントが骨と結合しない(オッセオインテグレーションの失敗)可能性があります。 手術後に腫れ、痛み、出血、内出血を伴うことがあります。 神経損傷や周囲組織損傷の可能性は低いものの、ゼロではありません。 長期的にはインプラント周囲炎を発症する可能性があります。 喫煙、糖尿病、歯周病既往、口腔清掃不良などにより成功率が低下することがあります。 前歯の抜歯即時インプラント(結合組織移植術・骨補填材併用) 抜歯と同時にインプラントを埋入し、歯肉の厚みを増やすために結合組織移植術を行い、インプラントと骨との隙間には骨補填材を填入して骨吸収を抑制する治療です。審美性と長期安定性の向上を目的として行われます。 主なリスク・副作用 移植した歯肉が十分に生着しないことがあります。 採取部(口蓋など)に術後の痛みや出血、違和感が生じます。 骨補填材が露出・感染する場合があります。 骨造成量が十分得られないことがあります。 骨補填材は個人差により吸収速度や置換速度が異なります。 歯肉退縮や歯肉形態の左右差が残ることがあります。 インプラントが骨と結合しない可能性があります。 術後に腫れ、痛み、内出血、感染が起こることがあります。 仮歯や最終補綴物の形態によっては追加修正が必要になることがあります。 長期的にはインプラント周囲炎や補綴物の破損・緩みが起こる可能性があります。 歯根端切除術 歯根の先端に病変が残存し、通常の根管治療のみでは治癒が期待できない場合に、歯根の先端と病変を外科的に切除し、逆根管充填を行って歯の保存を図る治療です。 主なリスク・副作用 病変が完全に治癒しない場合があります。 症状が改善しない場合や再発することがあります。 最終的に抜歯が必要となることがあります。 術後に腫れ、痛み、出血、内出血が生じます。 上顎では上顎洞と交通する可能性があります。 下顎では神経に近い場合、一時的または永続的なしびれが生じる可能性があります。 歯根破折が判明した場合は保存できないことがあります。 根尖部の解剖学的形態によって十分な切除が困難な場合があります。 感染や創部の治癒遅延が起こることがあります。 上顎臼歯部の成熟側GBR併用インプラント治療(2次手術時に結合組織移植術併用) インプラント埋入時に骨造成(GBR)を行い、インプラントが骨と十分に結合した後、2次手術時に結合組織移植術を併用して歯肉の厚みを増加させる治療です。骨と歯肉の両方を改善し、インプラント周囲炎の予防や長期安定性を目的として行います。 主なリスク・副作用 骨補填材やメンブレンが露出し、感染する場合があります。 骨造成量が予定より少なくなることがあります。 骨補填材が完全に骨へ置換されない場合があります。 骨造成部の吸収により追加の骨造成が必要となることがあります。 結合組織移植部が十分に生着しないことがあります。 口蓋採取部の痛みや出血、違和感が数日から数週間続くことがあります。 術後に腫れ、痛み、内出血が生じます。 インプラントが骨と結合しない場合があります。 上顎洞に近い部位では上顎洞炎や粘膜損傷が起こる可能性があります。 喫煙や糖尿病、歯周病既往などでは治癒が遅れる場合があります。 長期的にはインプラント周囲炎や補綴物の緩み・破損・摩耗が生じる可能性があります。 共通の注意事項 歯根端切除術以外の治療はすべて自由診療です。適応は患者様のお口の状態や全身状態によって異なります。治療後の経過には個人差があり、すべての患者様に同様の結果が得られるわけではありません。 また、良好な治療結果を長期間維持するためには、毎日の適切なセルフケアと定期的なメインテナンスが重要です。喫煙、糖尿病、歯周病の進行、強い食いしばりや歯ぎしりなどは治療結果や長期予後に影響を及ぼす可能性があります。 症例ごとに治療方法や術式が異なるため、実際の治療内容やリスクについては、カウンセリング時に詳しくご説明いたします。

皆様、こんにちは。

福岡市東区香椎のまこと歯科・矯正歯科、院長の木村誠です。

今回は、上顎前歯の複数歯欠損に対してインプラント治療を行った症例をご紹介します。

前歯のインプラント治療は、お口を開けたときに最も目立つ部分であるため、噛む機能だけでなく、歯ぐきの形や歯の見た目など、審美性にも十分配慮した治療が求められます。特に複数本の前歯を治療する場合は、それぞれの歯の位置や歯ぐきのバランスを整える必要があり、治療計画や術式の選択が重要になります。

今回の症例では、従来であればより広範囲な骨造成などの外科処置を検討する可能性がある状態でした。しかし、患者様のお口の状態を詳しく診査・診断した結果、PET(部分抜歯療法)、抜歯即時インプラント、マイナーGBR(小規模な骨造成)、結合組織移植術などを部位ごとに適切に組み合わせることで、できる限り治療の侵襲を抑えながら、審美性と長期的な安定性の両立を目指した治療を行いました。

なお、これらの治療法はすべての患者様に適応できるものではなく、お口の状態や骨・歯肉の条件などを総合的に評価したうえで適応を判断しています。

症例概要

患者様は50代の方で、他院にて前歯の治療を受けられていましたが、失活歯にトラブルが生じ、一部の歯は保存が難しいと判断されました。

欠損部に対してはインプラント治療をご希望されるとともに、「可能な限り1本ずつ独立した歯として修復したい」というご希望もありました。

そこで、患者様のご希望と口腔内の状態を踏まえ、長期的な安定性や清掃性、審美性にも配慮した治療計画を立案しました。

※初診時口腔内写真

初診時は、前歯に仮歯が装着された状態でご来院されました。原因となっている歯の状態を詳しく診査するため、まず仮歯を取り外して口腔内の状態を確認しました。

※初診時仮歯を外した状態

矢印で示しているのは、歯根を少しずつ引き上げる「挺出(ていしゅつ)」という処置を行うためのワイヤーのフック(前医の治療)です。

また、黄色の丸で囲った部分は、上顎右側中切歯(前歯)が欠損している部位を示しています。

※初診時の上顎前歯部の咬合面

矢印で示している部分には、歯根の一部が確認できます。

この歯根は歯ぐきの中に埋まった状態で残っており、お口の中からはほとんど見えない状態でした。

※初診時の上顎前歯のレントゲン像

上顎右側側切歯は、歯を長期的に残すために必要な健全な歯質(フェルール)を確保するには、さらに歯を引き上げる「挺出(ていしゅつ)」処置が必要な状態でした。

しかし、レントゲン検査では、さらに挺出を行うと歯を支える歯根の長さが不足し、歯の安定性が低下することが予想されました。そのため、長期的な保存は難しいと判断し、抜歯を選択しました。

一方、上顎左側中切歯および側切歯では、レントゲン写真で歯根の先に炎症を疑う所見(透過像)が認められました。また、歯の内部にはファイバーコアが装着されており、通常の根管治療(再根管治療)で改善を図ることは難しいと判断しました。

そのため、これらの歯については、歯をできるだけ保存するために歯根端切除術を行う治療方針としました。

診断

精密検査の結果、以下のように診断しました。

  • 上顎右側中切歯:欠損
  • 上顎右側側切歯:重度う蝕(虫歯)
  • 上顎左側中切歯:慢性根尖性歯周炎
  • 上顎左側側切歯:慢性根尖性歯周炎

治療計画

患者様のご希望と、お口の状態を総合的に評価したうえで、以下の治療方針としました。

  • 上顎右側中切歯・右側側切歯:抜歯後にインプラント治療を行い、機能性と審美性の回復を目指します。
  • 上顎左側中切歯・左側側切歯:まず歯の保存を目的として歯根端切除術を行い、治癒経過が良好であればセラミックによる修復を行う予定としました。

なお、治療計画は初診時の診断に基づいて立案したものであり、治療中に歯の状態を再評価した結果、必要に応じて治療方針を変更する可能性があることも患者様へご説明しました。

治療経過

※インプラント1次手術時①

まず、上顎左側中切歯に対して歯根端切除術を行いました。

続いて、上顎左側側切歯についても歯の保存を目的に歯根端切除術を行う予定でした。しかし、歯ぐきを切開して歯根を詳しく確認したところ、頬側近心部に歯根破折を認めました。

歯根破折は歯を保存することが難しい状態であるため、慎重に検討した結果、この歯は抜歯が適切であると判断しました。

なお、この時点では仮歯を安定して維持する必要があったため、当日の抜歯は行わず、仮歯への影響を考慮して後日あらためて抜歯即時インプラント治療を行う方針としました。

※インプラント1次手術

まず、上顎側切歯部にインプラントを埋入しました。

黄色の矢印で示しているのはヒーリングアバットメントと呼ばれる部品です。これは、最終的な人工歯を装着する前に歯ぐきの形を整えるための仮の土台であり、インプラント周囲の歯ぐきが自然な形に治癒するようサポートする役割があります。

※インプラント1次手術時咬合面

赤い矢印で示しているのは、上顎右側中切歯部に埋入したインプラントです。

黄色の線は、頬側(唇側)の骨の高さを示しています。この部位では骨に陥凹が認められ、抜歯後に骨が吸収した状態となっていました。

一般的に、歯を抜歯すると歯を支えていた骨は時間の経過とともに幅や高さが減少することがあります。特に前歯部では、この骨吸収が歯ぐきの形態やインプラントの長期的な安定性、さらには審美性にも影響を及ぼす可能性があります。

一方、緑色の矢印で示しているのは、上顎右側側切歯部に埋入したインプラントです。

青い丸で囲った部分には、PET(Partial Extraction Therapy:部分抜歯療法)の考え方に基づき、頬側の歯根の一部を意図的に保存しています。歯根の一部を残すことで、頬側の骨や歯ぐきの吸収をできるだけ抑え、インプラント周囲の組織を長期的に維持することを目的としています。

なお、この術式はすべての症例に適応できるわけではなく、歯根の状態や感染の有無などを十分に評価したうえで適応を判断しています。

PET(Partial Extraction Therapy:部分抜歯療法)とは

PET(Partial Extraction Therapy:部分抜歯療法)は、歯をすべて抜歯するのではなく、歯根の一部を意図的に保存しながらインプラント治療を行う術式の総称です。

従来の抜歯では、歯を支えていた歯槽骨や歯肉は時間の経過とともに吸収することがあります。特に前歯部では、抜歯後の骨や歯肉の吸収によって歯肉退縮や歯の長さの変化が起こり、審美性に影響を及ぼすことがあります。

PETは、このような組織変化を可能な限り抑え、骨や歯肉の形態を維持することを目的として開発された治療法です。

前歯部のインプラントでは、長期的な安定性や審美性を維持するために、インプラントの頬側(唇側)に十分な骨の厚みを確保することが重要と考えられています。

今回の症例では、頬側の骨の厚みが十分ではなかったため、骨補填材吸収性膜を用いた**GBR(骨造成術)**を併用し、インプラント周囲の骨の再生を促す治療を行いました。

さらに、吸収性膜が治癒期間中に動かないよう、吸収性固定ピンを用いて顎の骨に固定しました。吸収性固定ピンは体内で徐々に吸収されるため、一般的には取り外すための処置を必要としません。そのため、金属製の固定ピンを使用した場合と比較して、2次手術時の外科的侵襲を軽減できる可能性があります。

また、吸収性膜を適切に固定することで、骨造成部位を安定した環境に保ちやすくなり、骨の再生を促すための条件を整えることが期待されます。

※当院で用いている骨造成に用いる吸収性膜と吸収性の膜固定ピン

※骨造成

黄色で囲った部分が、**GBR(骨造成術)**を行った部位です。

骨補填材と吸収性膜を用いてGBR(骨造成術)を行い、インプラント周囲の骨の再生を促す環境を整えました。

前歯部では、十分な骨の厚みを確保することが長期的な機能維持だけでなく、歯ぐきの退縮を抑え、自然な見た目を維持するうえでも重要と考えられています。そのため、本症例でも骨造成を併用し、機能性と審美性の両立を目指しました。

※インプラント1次手術

歯根端手術を行なった上顎左側中切歯の根尖にも骨補填時を充填しました。

※インプラント1次手術終了時 口腔内写真正面

術中の精査により、上顎左側側切歯に歯根破折が認められたため、当初の治療計画を変更することとなりました。

それ以外の処置については予定どおり終了し、手術は大きな問題なく終えることができました。

※上顎右側中切歯部インプラント2次手術 術前

仮歯の大きさから、上顎左側中切歯の歯の長さは約9mmであることがわかりました。一般的に、日本人の上顎中切歯の歯冠の長さは約10~11mmとされているため、この歯はやや短い状態でした。

歯が短いままでは、見た目のバランスだけでなく、被せ物を長期的に安定させるために必要な健全な歯質(フェルール)の確保が難しくなる可能性があります。

そこで、審美性の改善と被せ物の長期的な安定性を目的として、歯冠長延長術を行うこととしました。歯冠長延長術は、歯ぐきや必要に応じて周囲の骨の形態を整えることで、歯の見える部分を適切な長さにし、被せ物をより安定して装着できる環境を整える治療です。

※歯冠長延長術を行なった上顎左側中切歯

このように歯肉を一部切除することにより矢印で示すように歯根を露出させ、歯を長くすることができます。

※インプラント2次手術直前の上顎左側側切歯の精査

上顎左側側切歯は歯根破折のためにプローブの数値は8ミリ(正常値3ミリ以下)を示しました。こちらのインプラントの1次手術と上顎右側中切歯のインプラント部の2次手術を行うことにしました。

※術前咬合面

※上顎左側側切歯抜歯

上顎左側側切歯には歯根の破折が認められたため、歯根をすべて抜歯し、抜歯と同時にインプラントを埋め込む「抜歯即時インプラント」を行うこととしました。

歯を抜いたあとは、インプラントをすぐに埋め込んだ場合でも、周囲の骨や歯ぐきがある程度減少することが報告されています。そのため今回は、抜歯によってできた穴に骨補填材を充填し、あわせて上あごの内側から採取した結合組織を移植しました。

これらの処置を併用することで、抜歯後に生じる骨や歯ぐきの形態変化をできるだけ抑え、インプラント周囲の組織を整えることを目指しました。

※結合組織採取(写真の黄色の丸で囲った部分が結合組織)

左上の前歯(側切歯)があった部分にインプラントを埋め込み、あわせて上あごの内側から採取した結合組織を移植することとしました。結合組織を移植することで、インプラント周囲の歯ぐきの厚みや形を整え、より自然な見た目と長期的な安定を目指します。

※上顎右側中切歯部に結合組織移植術

上顎右側中切歯にも術前硬・軟組織の陥凹を認めたため結合組織術も併用することとしました。結合組織移植術を行うのは、粘膜を厚くすることができ、将来的なインプラント周囲粘膜の退縮を予防します。

※結合組織移植術後

結合組織は、VISTAテクニックというインプラント周囲に切開を入れない術式で行いましたので、傷を目立ちにくいように工夫します。その後数ヶ月粘膜の治癒を待ち最終上部構造のセットの工程に移行しました。

※上部構造セット直前の状況

術前の状態から様々な治療により、インプラント周囲に十分な組織を再構築することができました。

※インプラント上部構造セット時の粘膜

ソケットシールドテクニック、GBR(骨を増やす治療)、結合組織移植術を併用することで、インプラント周囲の骨や歯ぐきの形を整えました。その結果、歯と歯の間にある歯ぐき(歯間乳頭)についても、治療前と比べて自然な形態に近づけることができました。

※上部構造セット時

最終的な被せ物として、ジルコニア製の上部構造を装着しました。

それぞれのインプラントに独立した被せ物(単冠)を装着できたため、歯と歯の間にフロスを通すことが可能となり、日常のお手入れがしやすい形態に整えることができました。また、周囲の歯や歯ぐきとの調和にも配慮し、清掃性と自然な見た目の両立を目指しました。

※術後CT像

黄色の線で囲っている部分に注目するとインプラント周囲に十分な組織が存在することがわかります。

まとめ

上顎前歯部のインプラント治療は、見た目や歯ぐきの形、周囲の骨の状態などを考慮する必要があり、高度な診断と繊細な処置が求められる治療です。

近年では、インプラント治療の技術や使用する材料の進歩により、患者様の骨や歯ぐきの状態によっては、手術の範囲を抑えたり、治療期間を短縮できたりする場合もあります。

ただし、適した治療方法や治療期間は、歯や骨、歯ぐきの状態によって異なります。前歯の見た目や噛みにくさ、歯の欠損などでお悩みの方は、当院までご相談ください。

医院情報

医療法人 まこと歯科・矯正歯科

福岡県福岡市東区香椎駅前2-12-54-201

092-692-2963