歯周病治療

  • 2026.04.12

下の前歯の歯茎下がりを治療した症例

  • Before

    下の前歯の歯茎下がりを治療した症例

    治療前

  • After

    下の前歯の歯茎下がりを治療した症例

    治療後

患者 30代女性
主訴・ニーズ 歯茎が下がってきたのが、気になる。
診断名・症状 下顎前歯部 歯肉退縮
治療内容・治療費(自費診療) 根面被覆術(結合組織移植術併用)
治療費総額 ※自由診療のため、公的医療保険は適用されません。 132,000円(税込)
治療期間 初診から2か月 歯周基本治療 根面被覆(手術1回)
来院頻度 週1回程度 手術後は、週に1−2回程度消毒で来院が必要
リスク・副作用 根面被覆術(VISTAテクニック・結合組織移植術・薬剤併用)について 歯肉退縮により、歯の根元が見える、しみる、見た目が気になるなどの症状に対して、根面被覆術を行うことがあります。 当院では、症例に応じてVISTAテクニック、結合組織移植術(CTG)、必要に応じた材料・薬剤の併用を検討します。 ただし、すべての症例で同じ結果が得られるわけではなく、歯ぐきの厚み、歯槽骨の状態、歯並び、清掃状態、かみ合わせ、喫煙習慣、術後管理の状況などにより、治療結果には個人差があります。 主なリスク・副作用 術後に痛み、腫れ、出血、違和感が出ることがあります。 一時的にしみる症状が強くなることがあります。 傷の治り方には個人差があり、予定した範囲まで根面を被覆できないことがあります。 治療後に歯肉の位置がわずかに戻ることがあり、後戻りや再退縮が生じることがあります。 移植した組織の治癒不全、壊死、部分的脱落、色調差、厚みの左右差が生じることがあります。 採取部位を伴う結合組織移植術では、口蓋部の痛み、出血、しみる感じ、食事時の不快感が出ることがあります。 縫合部の炎症、感染、創の開き、瘢痕、治癒遅延が起こることがあります。 歯根の形態、くさび状欠損、歯の位置異常、骨の欠損状態によっては、十分な改善が得られないことがあります。 術後のブラッシング圧、外傷性咬合、歯ぎしり、喫煙などの影響により、結果の安定性が損なわれることがあります。 必要に応じて追加治療や再治療が必要になることがあります。 VISTAテクニックに伴う注意点 VISTAテクニックでは、小切開から歯肉を剥離・移動させるため、術後に腫れ、内出血、つっぱり感、口唇・前庭部の違和感が出ることがあります。 また、歯肉の移動量や固定状態によっては、十分な被覆が得られない場合や、後戻りが生じる場合があります。 結合組織移植術(CTG)に伴う注意点 結合組織移植術では、通常、上あごなどから組織を採取します。 そのため、受容部位の症状に加え、採取部位にも痛み、出血、腫れ、知覚過敏様症状、食事や会話時の不快感が出ることがあります。 まれに採取部位の治癒遅延や再出血を認めることがあります。 薬剤併用について 症例によっては、治癒の促進を目的として薬剤を併用することがあります。 ただし、使用する薬剤や材料には適応・使用条件があり、症例によっては保険適用外または適応外使用となることがあります。 薬剤の種類によっては、局所の刺激感、腫れ、治癒反応の個人差などがみられることがあります。 リグロス併用に関する重要事項 リグロスは国内で承認された歯科用薬剤ですが、承認された効能・効果は歯周炎による歯槽骨の欠損に関するものです。根面被覆術への併用は、症例によっては**承認された効能・効果の範囲外での使用(適応外使用)**となる場合があります。適応外使用を行う際には、その必要性、期待される効果と限界、想定される不利益について説明を行ったうえで、同意をいただいた場合に限り実施します。 治療を受けられない、または慎重な判断が必要な場合 歯周病の炎症が強い場合、清掃状態が不十分な場合、喫煙習慣がある場合、全身状態によって創傷治癒に影響がある場合、歯の位置や骨の状態が不利な場合には、希望された術式が適さないことがあります。 その場合は、歯周基本治療、清掃指導、くさび状欠損への対応、矯正治療や補綴治療を含めて、他の方法をご提案することがあります。 費用について 本治療は自由診療です。 治療内容、範囲、使用する材料・薬剤、採取部位の有無により費用は異なります。 詳細は診察・検査後にご説明します。

皆様、こんにちは。
福岡市東区香椎駅前でまこと歯科・矯正歯科を開業しております、木村誠と申します。

今回は、**下の前歯の歯ぐきが下がった症例に対して行った治療(根面被覆術)**についてご紹介いたします。

下の前歯の歯ぐきは、もともと歯ぐきや骨の厚みが薄いことが多く、歯ぐきが下がりやすい部位とされています。
そのため、歯みがきの力や歯並び、かみ合わせなど、さまざまな要因によって歯肉退縮が起こることがあります。

また、この部位は歯ぐきが薄いため、外科的に回復を図る場合には、丁寧で繊細な処置が必要となることが多く、症例によっては難易度が高くなることがあります。

今回の患者様は、30代の女性の方で、歯ぐきの見た目やしみる症状を主訴に来院されました。

歯ぐきの状態や原因を評価したうえで、適応を慎重に判断し、根面被覆術を行いました。

なお、このような治療はすべての方に同じ結果が得られるわけではなく、歯ぐきや骨の状態、歯並び、生活習慣などにより、治療結果には個人差があります。
また、術後に腫れや痛み、しみる症状などが一時的に出ることがあります。

今後、治療の経過や結果についてもご紹介させていただきます。

口腔内診査

※初診時の口腔内写真正面

下あごの前歯部において、**複数の歯で歯ぐきが下がっている状態(歯肉退縮)**を認めました。

この部位は、もともと歯ぐきや骨の厚みが薄いことが多く、歯ぐきが下がりやすい傾向があります。
また、歯みがきの力のかかり方や歯並び、かみ合わせ、生活習慣など、さまざまな要因が関係していることがあります。

複数の歯に歯肉退縮がみられる場合には、歯ぐき全体の状態や原因を確認したうえで、適切な治療方法を検討することが重要です。

※下顎前歯の拡大写真

下あごの前歯部に注目すると、黒い線で示した部分が歯の上の部分(歯冠)と根の部分(歯根)の境目になります。

この境目よりも歯ぐきが下がっている状態がみられ、歯ぐきの退縮が起こっていることが確認できます。

※下顎の前歯の拡大写真

丸で囲った部分に注目すると、歯の根の形が歯ぐきの下にうっすらと浮き出て見える状態が確認できます。
このような所見は、歯ぐきや骨の厚みが比較的薄い可能性を示していると考えられます。

また、矢印で示した部分では、歯と歯の間の歯ぐき(歯間乳頭)がやや下がっており、**すき間が見える状態(いわゆるブラックトライアングル)**が認められます。

このように歯と歯の間の歯ぐきにも変化がみられる場合には、治療方法の選択や処置の内容を慎重に検討する必要があり、症例によっては外科的な処置が難しくなることがあります。

※下顎前歯部を側方から撮影した写真

丸で囲った部分に注目すると、歯ぐきの厚みが薄い状態が確認できます。
このような場合、さまざまな要因によって今後さらに歯ぐきが下がる可能性があると考えられます。

歯ぐきの状態について患者様にご説明し、治療の選択肢の一つとして根面被覆についてもご案内しました。
ご相談のうえで、より詳しく状態を確認するため、追加の検査を行うこととしました。

※歯肉退縮量の測定

今回は、複数の歯で歯ぐきが下がっている状態がみられたため、専用の器具(プローブ)を用いて、それぞれの歯の歯ぐきの下がり具合を測定しました。

また、測定の際に器具が歯ぐきの中で透けて見える所見があり、歯ぐきの厚みが比較的薄い状態である可能性が示唆されました。

※歯間部の診査

歯と歯の間の歯ぐきや骨の支えの状態について、専用の器具(プローブ)を用いて測定・確認を行います。

その結果をもとに、歯ぐきの回復を目的とした治療(根面被覆)が適しているかどうかを、総合的に判断します。

診断

下顎両側中切歯 Cairoの分類RT2

下顎右側側切歯、下顎左側犬歯Cairoの分類RT1

術式選択

歯ぐきの下がりに対する治療(根面被覆術)には、いくつかの方法があります。

今回の症例では、
・複数の歯に歯ぐきの下がりがみられること
・下あごの前歯部で歯ぐきの厚みが薄いこと
・歯ぐきの下がり方にばらつきがあること
などを踏まえ、VISTA(ヴィスタ)テクニックという方法を選択しました。

また、歯ぐきの厚みを補い、治癒を安定させることを目的として、ご自身の組織を用いた結合組織移植術を併用しました。
このような方法は、症例によっては歯ぐきの状態の改善や安定性の向上が期待されると報告されていますが、結果には個人差があります。

さらに今回は、治癒の促進を目的として、歯周組織再生療法に用いられる薬剤(リグロス:FGF-2)を併用しました。
この薬剤は、血管の形成や組織の回復を助ける作用があるとされており、症例に応じて使用が検討されます。

なお、使用する薬剤や材料には適応や使用条件があり、症例によっては保険適用外または適応外使用となる場合があります。治療内容については、事前にご説明のうえで同意をいただいております。

治療

※手術中の写真①

VISTA(ヴィスタ)テクニックでは、歯ぐきの動きやすい部分(可動粘膜)に小さな切開を行い、そこから専用の器具を用いて歯ぐきをやさしく広げるように処置を行います。

また、その切開部を利用して、必要に応じて結合組織(ご自身の組織)を内部に挿入し、歯ぐきの厚みや形を整えていきます。

※手術中の写真②

歯ぐきの回復を目的とした治療では、下がっている歯ぐきを本来の位置に近づけるように調整することが重要になります。

今回行ったVISTA(ヴィスタ)テクニックでは、縫合の際に、歯ぐきが元の位置に安定するように糸で固定し、その位置を保つために歯の表面に専用の材料(レジン)を用いて支えを作ります。

矢印で示しているのは、その処置を行う前に歯の表面を整えるために使用する薬剤(エッチング剤)です。

※手術中の写真③

結合組織を移植する前に、歯ぐきを上方へ移動させ、本来の位置に近づけた状態で糸により固定した様子です。

全体として、歯ぐきを矢印の方向へやさしく引き上げるように調整しています

※手術中の写真④

上あご(口蓋)から必要な量の結合組織を採取し、形や大きさを確認している様子です。
今回は、必要なボリュームを確保するため、左右それぞれから採取を行いました。

この後、はじめに行った小さな切開部から、採取した結合組織を内部に挿入し、糸で固定していきます。

また、症例に応じて、組織の治癒を助けることを目的として薬剤(リグロス)を使用することがあります。
この薬剤は、血管の形成や組織の回復を助ける作用があるとされていますが、効果には個人差があります。

VISTA(ヴィスタ)テクニックでは、必要に応じて十分な量の結合組織を挿入できるため、歯ぐきの厚みの改善が期待される方法の一つとされています。

※手術直後

最後に、切開した部分を糸で縫い合わせて、手術は終了となります。

手術当日からお食事は可能ですが、術後しばらくはやわらかいものを中心にしていただくことをおすすめしています。

術後の注意点としては、
・口元(くちびる)を強く引っ張らない
・腫れや違和感があっても、できるだけ触らない
・術後しばらくは歯ブラシを当てない
など、治療した部分にできるだけ負担をかけないことが大切です。

また、術後の清潔を保つため、術後2日目以降はうがいを行っていただきます。
あわせて、必要に応じてご来院いただき、歯科衛生士による専門的なケアを行います(通院頻度は症例により異なります)。

結合組織を採取した部位(上あご)については、出血のリスクを抑える目的で、専用のマウスピースを装着していただく場合があります。

糸を取る時期の目安としては、
・組織を採取した部位:約1週間後
・歯ぐきの治療を行った部位:約2週間後
となりますが、治癒の状態により前後することがあります。

歯みがきについては、
・やわらかい歯ブラシでの清掃:糸を取った後から開始する場合があります
・通常の歯ブラシや歯間ブラシ:おおよそ術後1か月以降を目安に再開します
※再開時期は、状態に応じてご案内します

その後は、定期的にご来院いただき、経過の確認やメンテナンスを行います。

※術後2か月の口腔内写真

治療後、歯ぐきの下がりは改善がみられ、見た目や状態の変化が確認できました。

※術後2か月

下あご前歯部の拡大写真です。
治療後、歯の根元の露出はほとんど目立たない状態まで回復がみられました。

今回の症例は、歯ぐきの厚みが薄いことや、複数の歯にわたる治療であったことから、慎重な処置が必要とされるケースでしたが、経過として良好な変化が確認できました。

※術前・術後の口腔内写真(左:術前、右:術後)

まとめ

歯ぐきの下がりに気づくきっかけとしては、
・しみる症状(知覚過敏)
・見た目の変化(審美的なお悩み)
などが挙げられます。

また、歯ぐきが下がることで、
・知覚過敏
・歯の根元の摩耗(NCCL)
・見た目の変化
・根の部分のむし歯(根面う蝕)
などが生じることがあります。

歯ぐきの下がりは、多くの方にみられる状態の一つです。

根面被覆術は、歯ぐきの状態や原因を踏まえたうえで、適切な方法を選択することが重要な治療です。

歯ぐきの下がりや、それに伴う症状でお悩みの方は、まずは現在の状態を確認することが大切です。
気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

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